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    「昔この辺は集落だったなと眺めに来る程度でないかな」能登半島地震で“集団移転”を決めた住民の思い

    能登半島地震と豪雨災害で大きな被害を受けた輪島市で集落の住民がまとまって災害リスクの低い地域へ移転する「集団移転」の動きがあります。住み慣れたふるさとの再建を諦めざるを得なかった住民の思いと集落の現状を取材しました。

    輪島市の中心部から車でおよそ30分。山あいの地域にその集落はあります。
    輪島市別所谷町。去年元日に能登半島地震が起きるまではおよそ40世帯80人が暮らしていました。

    「これがずっと道路やった。あそこからここへ道路が走っていた。これが水害で」
    こう語るのはこの集落で生まれ育った倉山邦雄さん。
    集落へと続く道は、地震の後一旦は応急復旧されましたが去年9月の豪雨で再び崩れました。

    集落を襲った大量の樹木や電柱は手つかずのまま。電気や水は今も復旧していません。
    倉山さん:
    「こんなとこ、現場見てもらわないとわからないけど住める状態の住宅はない」
    倉山さんの自宅にも敷地の上から土砂が流れこみました。

    倉山さん:
    「これはさっき言ってた自分の車庫なんだけど」
    記者:
    「倉山さんの家はここですか?」
    倉山さん:
    「うん、これ」
    記者:
    「これが車庫?」
    倉山さん:
    「車が中に入ってる」
    記者:
    「入ったままなんだ」
    倉山さん:
    「恐らく車も壊れていると思うけど、それすら確認できん」

    車庫はこの後解体する予定で、自宅についても基礎部分が崩れていて住むことはできません。そして、地震のあと、この集落で生活している人は誰もいません。

    倉山さん:
    「復旧を早く進めればまた、どの程度まで復旧できるかそれによって、これなら大丈夫かなというような気持になったかもしれんけど、それからずっと地震から水害までもずっと手つかずやったもんで。」

    輪島市中心部にある仮設住宅団地。
    別所谷町で暮らしていたおよそ40世帯のうち24世帯が現在はここで暮らしています。

    倉山さん:
    「敷地も崩れ家も壊れ、上見れば山も切れて滑ってくる状況なものでもう生活は無理じゃないか、水も復旧できないし。また雨が降ればどうなるか。そういう恐怖を感じて、住んでる人がもうここではちょっと厳しいのではないかなという思いで皆さんおるがかなと思う」

    去年の地震で、別所谷町は道路が寸断され住民たちは6日間に渡って孤立。また9月には豪雨の影響で土砂崩れや地滑りが発生し住民たちの心から災害の恐ろしさが消えることはありませんでした。

    『集落とは別の場所でみんなで暮らしたい』

    去年10月、仮設住宅の集会所で住民同士が話し合った結果、全ての世帯が別所谷町での生活再建を諦めるという結論になりました。

    倉山さん:
    「あとは自分の思いもあれなんですけど輪島市の方にお願いして、それしかないかなと思っているんだけど。お願いして。自分でどうこうできる状態じゃないものですから。もう、それしかないね」

    今年2月、別所谷町の住民は輪島市の坂口市長を訪ね、住民の総意として集団移転の要望書を手渡しました。移転先として希望するのは土砂災害の危険性が少ない市の中心部です。

    別所谷町の区長:
    「一人もそこに生活する勇気がなかったんですね。怖い、山の地滑りが怖くて。みんなの意見が一つにまとまったのでぜひとも市や皆さんに通るようにお願いしたいです。」

    輪島市 坂口市長:
    「住み慣れた地域を離れての集団移転ということで、本当に大変な思いをしながら皆さんのご意見をまとめられたと思います。責任を持って実現に向けて取り組んでいきたいと思っています」

    国が行う集団移転とは、災害の危険性の高い地域から別の地域に住民が移転できるよう、自治体が主体となって新たな住宅団地を整備する事業です。
    その流れは、まず、津波や土砂崩れなどのリスクがある地域に暮らす住民が話し合い、地域全体で移転することを自治体に要望します。そして自治体は住民の希望する移転先の土地を確保し、宅地として整備したうえで、住民に売却または有料で貸し出します。住民がもともと所有していた土地や建物は自治体が買い取るなどし、生活するには危険な地域として新たな住宅が建てられないように建築制限をかけるというものです。

    2011年に発生した東日本大震災では、被災地全体で295地区およそ3万7000戸の住民が集団移転を希望しました。このうち最も早く集団移転を進めた宮城県岩沼市でも移転が完了したのはおよそ4年後。輪島市は今年度中に別所谷町の集団移転について別所谷町の災害リスクの調査や、住民へのヒアリングなどを行う予定でその後、事業計画の策定などのプロセスに移る見込みです。

    倉山さん:
    「この辺のここらも田んぼで。わかるやろうけども、ずっと田んぼやったけどこんな状態」
    記者:
    「この年になって生き方が変わるようなことが起こるというのはどう思いましたか?」
    倉山さん:
    「それが一番、自分はここでもう最後までと思っていたんだけども。昔ここらは、この辺は集落だったなと眺めに来る程度でないかな」

    「昔この辺は集落だったなと眺めに来る程度でないかな」能登半島地震で“集団移転”を決めた住民の思い

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