世界的に珍しい冬の雷 冬季雷のメカニズムを解説
冬は日本海側で雷が多い
昔から北陸地方では、寒ブリ漁が始まる合図として、11月末から12月にかけて吹く強風と激しい雷を「ぶり起こし」と呼んでいます。
気象庁の観測データを基に月別の雷日数の平年値(1991~2020年までの30年間の平均)をみてみると、金沢のような日本海側の地方で、特に11月から2月頃の冬を中心に雷の観測が多くなっています。
冬の雷の特徴
◆積乱雲の高さ
冬場は上昇気流が夏と比べて弱く、気温が下がらない安定層が上空にあるため、積乱雲の雲頂は低くなり、一面に広がりやすいです。
夏場は雲頂が圏界面付近の12~13kmに達するのに対し、冬場の雲頂は5kmほどになります。また雲底も夏場の半分の1kmほどと地上から低い位置に雲が発生するのが特徴です。
◆雷の種類
雷には、
・対地放電(落雷)…雲と地上の間で発生する放電
・雲放電…雲の中や雲と雲の間などで発生する放電
があります。
上昇流が強い夏場は雲放電が盛んな一方で、比較的上昇流が弱くなる冬場は雲放電が少ないのが特徴です。また、飛行機が雷を誘発して雷が発生する誘発雷が起きやすいのも冬場の特徴で、航空機の運航に大きな影響を与えています。
◆落雷のエネルギー
冬の雲は夏の雲に比べて水平方向に広範囲に広がり、雲底も低く、雲放電が少ないため、一度落雷が発生すると、そのエネルギーは夏場より大きくなります。このため、冬の雷は「一発雷」とも呼ばれています。
夏場の雷は大気の状態が不安定になる午後から夕方に発生することが多いですが、冬場の雷は昼夜問わず発生します。
冬の雷の発生メカニズム
この季節風が比較的暖かい日本海の上を通過すると、海面から大量の水蒸気と熱が供給されて、次第に暖かく湿った空気へと変わり、不安定化することで積乱雲が発生します。
この発達した雲は、季節風に乗って日本海側沿岸に流れ込みますが、陸地では水蒸気の補給が断たれて上昇流が弱まり徐々に衰弱するため、冬の雷は、海岸からの距離が遠くなるほど少なくなります。
世界的にも珍しい冬の雷
いずれの地域も暖かい海面上を冷たい空気が通過し、次第に水蒸気を含み不安定化することで時に雷を伴う活発な雲が発生します。
冬の雷への対策
また雷で身の危険を感じた際は、鉄筋コンクリート等の頑丈な建物の中、自動車内、避雷小屋などに避難してください。竜巻などの激しい突風の影響で窓ガラスが割れることもあります。窓から離れた建物の中央付近に身を置くようにしてください。屋外などで、避難できる場所が近くにない場合は、しゃがみ込んで、耳をふさぐ姿勢を取りましょう。靴のかかとを接触させ、つま先立ちで姿勢を保つようにしてください。落雷時に地面からの電流で感電することもあります。地面には寝ころばない(特に腹ばいにはならない)ように注意してください。
まとめ
冬季雷は日本海側地域で馴染みのある現象ですが、落雷時のエネルギーが大きく飛行機や鉄塔、電子機器に悪影響を及ぼす可能性があります。また身の危険を感じた際は、建物の中など安全な場所に避難するなどしてください。
