諸草に伸びたつ花穂の半夏生―俳句歳時記を楽しむ
2018年07月02日
半夏生草
笛吹の川の音色も半夏かな
こちらが半夏(烏柄杓)
・安倍館(あべたて)の間道烏柄杓かな
<昆ふさ子>
・烏柄杓千本束にして老いむ
<飯島晴子>
この独特の仏炎包の形は目につくことからも、先に述べたように、昔から半夏は農事の目安とされてきました。その半夏が生える頃の「半夏生」は、真夏の最盛期に向かい、野も山も生き生きとエネルギーが充填される頃ですね。
・いつまでも明るき野山半夏生
<草間時彦>
・笛吹の川の音色も半夏かな
<本宮鼎三>
・鯉の口朝から強し半夏生
<藤田湘子>
・山坊に白湯沸いてゐる半夏かな
<木内彰志>
夜へ継ぐ工場の炎や半夏雨
・水がめに虫の湧きたり半夏生
<上村占魚>
・半夏生子の用ゆえにみだしなみ
<神村睦代>
・半夏生糟糠の妻起きて来ず
<樋口 博>
・半夏生女らしさをうとまれて
<岡島孝子>
半夏雨も、季語としてよく用いられます。時期的にも梅雨の後半を迎えて半夏生に降る雨は、大雨になるとされていました。各地への災害が続く昨今にも共通する警告となっています。くれぐれもこの時期の大雨には、気をつけたいものですね。
・医通ひの片ふところ手半夏雨
<大野林火>
・半夏の雨塩竈夜景母のごと
<佐藤鬼房>
・外湯まで雨傘さして半夏寒む
<清水基吉>
・磐梯をしんそこ濡らし半夏生
<阿部みどり女>
・夜へ継ぐ工場の炎や半夏雨
<角川源義>
半夏生など挿し心にくかりし
両足院の半夏生草
・半夏生草真田屋敷に咲き馴染む
<河又一爽>
・半夏生など挿し心にくかりし
<井尾望東>
・諸草に伸びたつ花穂の半夏生
<石川風女>
京都・東山の建仁寺塔頭・両足院では、約800株の半夏生の見頃を迎えています。通常は非公開の庭園は、7月12日まで初夏の特別拝観期間です。この機会に、白い可憐な半化粧の様子をご覧になってはいかがでしょうか。
【句の引用と参考文献】
『新日本大歳時記 カラー版 夏』(講談社)
『カラー図説 日本大歳時記 夏』(講談社)
『第三版 俳句歳時記〈夏の部〉』(角川書店)
両足院の半夏生草