ホウレンソウが体にいいと最初に教えてくれたのは、船乗りでしたか?

葉がギザギザしてアクの少ない東洋系と、葉が丸く肉厚の西洋系の2種に大別されます
ポパイの正体は「ベジタリアン」だった?!

缶を握りつぶして中身を食べる腕力がありながら♪
それにしても アメリカには他にスタミナ食がいっぱいありそうなのに、なぜステーキでもフライドチキンでもなくホウレンソウなのでしょう?
じつはポパイは『全米ベジタリアン協会』の公式宣伝キャラクターだったのです!
もともとニューヨーク・ジャーナル新聞に連載されていた『シンプル・シアター』という漫画の脇役だった彼が、その不死身なキャラクターで人気沸騰、まさかの(?)主役抜擢に。当初はホウレンソウではなく、キャベツを丸かじりしていたといいます(さすがに持ち歩くには適さなかったのか、アニメ化を機にホウレンソウの缶詰になりました)。「ホウレンソウを食べるとポパイのように強くなる」という保護者の呪文とともに、アメリカのみならず日本の子供たちにもホウレンソウは高い栄養価をもつ野菜だと認知されることとなったのです。
ところで、ブルートの狙いはポパイの恋人オリーブ。いつも略奪されそうになって「ポパ〜イたすけて〜」と叫んでいます。じつは彼女、初期の漫画時代に主人公だったハム(肉食系?)の元恋人。なんとポパイ、主役の座のみならず彼女まで・・・そもそも『ポパイ』はアニメのキャラクターとしては異色のアダルトな風貌の3人(ポパイは パイプをくわえた入れ墨のおじさん)ですが、そのテーマも「略奪愛」?という大人っぽさだったのですね。
食べると血の気が多くなるようです
漢名『菠薐(パウリン)』は 中国語で「ペルシャ」の意味。コーカサス地方の原産で、ペルシャやトルコ地方で古くから栽培され、イスラム教徒の手で東西に伝播されたそうです。
日本に伝わったのは16世紀頃。明治以降には ヨーロッパやアメリカから西洋種も入り、品種改良が重ねられてきました。現在、アクが少なく生のまま食べられる「サラダホウレンソウ」や 葉が肉厚で甘みが強い「縮みホウレンソウ」など、さまざまな種類がありますね。
根の切り口が大きくて 茎を持つとシャキッと立つもの、葉と茎が濃い緑でハリ・ツヤのあるものが新鮮です。買ってきたら、全体を水にザッとくぐらせて新聞紙に包み、ビニール袋に入れて立てた状態で野菜室で保存しましょう。
血の気の多いポパイは ホウレンソウでさらに血気さかんにパワーアップします。薬膳では「血液を補う野菜」といわれ、鉄分とその吸収をよくするビタミンC、葉酸を含み、すぐれた造血作用で知られています。
豊富なカロチンは、体内で必要に応じてビタミンAに変わり、免疫力を高めたり粘膜を保護する働きをします。「ホウレンソウやニンジンなどの緑黄色野菜を毎日食べている人は胃ガンや大腸ガンにかかりにくい」というデータも! ビタミンCの他にも B1・B2と、肌荒れや風邪を予防する栄養素がたっぷり。冬の体をパワーアップしてくれる野菜なのです。
日本の子供は美味しく食べていました!

日本が誇る和食「お浸し」。無敵です
「日本の子供はなぜホーレン草が平気なのでしょうか。
日本の料理の中に出てくるホーレン草は、西洋のよりもっとデリケートだからだと思います。英米でたべさせるような、味のあまりない、ぐたぐた煮すぎた大きい黒ずんだ緑の山が皿に盛られているのを見ると、どこの子供もがっかりするはずでしょう。
日本のホーレン草はあんな風でなくて、小さいお皿にきれいによそってあって、ちょっとしか煮てないし、しょう油とかゴマの味がしてなかなかおいしい。」
( ドロシー・ブリトン『味覚の記録』1967)
ホウレンソウの缶詰は日本ではあまり見かけません(ネット通販などで入手できるようですが、購入者の評価は厳しめです)。まだ冷凍野菜が普及していなかった時代、広いアメリカで安心して流通できる保存食材が「缶詰」だったのですね。かつて多くのアメリカの子供たちは、栄養のためにガマンしてホウレンソウを食べていましたが、日本の子供たちは当時から、サッとゆでてシャキッとした食感の美味しいホウレンソウを食べていたのではないでしょうか。
シャキッとゆでるポイントは?
鉄分を活かすには、卵・ツナ・ハムなどタンパク質を組み合わせるとよいそうです。
茎の甘みもぐっと増す冬。美味しいホウレンソウをモリモリ食べて、ポパイのように元気に過ごしたいですね。
<参考>
『野菜博物誌』草川俊(日本経済評論社)
『野菜料理事典』フルタニマサエ(成美堂出版)