唯一無二が東京都庭園美術館に集う!「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」展
2019年02月21日
《はるかな旅 A Long Journey》©Okanoue Toshiko, 高知県立美術館
※フォトコラージュ…既存の写真を切り取り、貼り付けて新たな作品にする技法。
あふれる想いを形に~フォトコラージュとの出会い
《真昼の歌 Noon Song》©Okanoue Toshiko, 個人蔵
「あふれる様に湧いてくる空想や、夢や、ストーリーを何か形にしたくてもどういう方法をとっていいか分からなかったのです…」(美術手帖 1953年3月号)
このような気持ちでいた時に出会ったコラージュ…さまざまなモチーフをちぎり絵のように組み合わせる技法に出会い、岡上はよろこびを見い出したのです。「手と鋏と無意識」によって紡がれた作品の数々は、「自分の夢にふさわしいものを」LIFEやVOGUEなど海外のモード紙から切り抜いて、思いのままに貼り付け、コラージュに生まれ変わりました。岡上の才能は日本のシュルレアリスムの先導者・瀧口修三に見いだされ、その後押しと影響の元で制作を続け、1953年タケミヤ画廊(東京)での個展へと繋がり一躍注目を集めます。
女性の苦悩を描いた作品《海のレダ》
《海のレダ Leda in the Sea》©Okanoue Toshiko, 個人蔵1
「『海のレダ』は、私の一番好きな作品です。女の人は生まれながらに順応性を与えられているといいますが、それでも何かに変わっていく時にはやはり苦しみます。そういう女の人の苦悩をいいたかったのです。」(美術手帖 1953年3月)
《海のレダ》は、大海原を引き裂くように白鳥と女性が一体となって進み行く姿が印象的な作品です。白鳥は波を立てずにすーっと進むのが常ですが、この作品では水面下での勢いをそのまま表面に描いているにもかかわらず、女性はポーカーフェイスであるのが逆説的であり、画面構成はシンプルであるがゆえに印象的です。この作品に対峙した時、私はそこに深い悩みや苦しみの中にいた頃の私自身をの姿が重なる想いを感じました。悩める多くの女性に見てほしい作品の一つです。
表現者としての選択
《花嫁 Bride》©Okanoue Toshiko, 東京国立近代美術館蔵
コラージュの持つ力
《幻想 Fantasy》©Okanoue Toshiko, 個人蔵
「日常の生活を平凡に掃き返す私の指から、ふと生まれましたコラージュ。コラージュ―他人の作品の拝借。鋏と少しばかりの糊。芸術と申せば何んと軽やかな、そして何んと厚かましい純粋さでしょう。ただ私はコラージュが其の冷静な解放の影に、幾分の嘲笑をこめた歌としてではなく、この偶然の拘束のうえに、意思の象を拓くことを願うのです。」(「ぴ・い・ぷ・る」『藝術新潮』1956年7月号)
表舞台から退く前、まだ20代の頃の言葉ではありますが、これらの言葉から芸術家を目指したのではない、表現をしたかっただけ…という、なんとも純粋な姿勢が伝わって来ますね。再評価についても、純粋に作品が誰かの元で「意思の象を拓くこと」のみを願っているのではないかと筆者は思っています。
何をしたいのか、何ができるのか…悩み多き現代社会を生きる多くの方々に、唯一無二の作品が放つ、内に秘めた情熱を感じてほしい、と純粋に思うのです。
展覧会概要 他
*展示 本館(旧朝香宮邸)、新館・ギャラリー1
*関連プログラム
2/22 担当学芸員によるギャラリートーク(申し込み不要)
3/21 講演会「岡上淑子の視覚世界」 講師:神保京子(2/21~web申し込み)
※詳細はリンクサイトよりご確認ください。
【出典・引用】
東京都庭園美術館 展覧会プレスリリース
岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟 展覧会カタログ